ファースト・コンタクト
恒例の、ストレス発散の一気書きです。
今回は『クロスアロー』本編直後、クレスタとベルデオには出番がなかった番外編のあたり。そのうちベルデオ編も書くかも。
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勤め先であり住み家でもある宇宙船“クロスアロー”が定期点検を兼ねた改修に入ったため、二ヶ月の休暇を得たクレスタは久しぶりに実家に帰省することにした。
田舎というほどでもないが、都会とも言い切れない。中途半端な規模の生まれ故郷へはもよりのコロニーから定期便を乗り継いで四日。
午後には目的地に到着、というその朝、クレスタは自由席の一席に腰を下ろした。
しだいに混雑してくる車中を尻目に、前もって買い込んだ雑誌に目を通す。
「ここ空いてますか」
「ええ、どうぞ」
と答えて顔を上げると
「あ」
「え?」
同時に声をあげた。
「クレスタ…か?」
「コレルオネ?」
同じ大学に進学した、唯一の同級生だった。
「久しぶりだなあ。里帰りか?」
「そう。コレルはこっちに就職したんだったっけ」
荷物を網棚に押し込み、すっかり出張中のサラリーマンという風情の友人は、一気に時間を昔に戻して気安い口調で話しかける。
「まあな。景気はどうだ? 今は貨物船乗りか。しかもクロスアローだろ?」
おや、とクレスタは思った。
「先輩を知ってたんだ?」
「直接知り合いってわけじゃないけど、有名人だったからな。仕事にも厳しいだろ」
「そうでもない」
自分でも意外な事実だが。
と、携帯電話が鳴った。コレルだ。
「…ああ、もう帰る。……うん、うん……大事にしろよ。じゃあな」
短い通話を終えると、礼儀正しく視線を雑誌に落としていたクレスタに問われるより先に、照れくさそうに言った。
「あ、俺、結婚したんだ。来月には親父さ」
「……へえ。それはおめでとう」
にっこり笑って言ったクレスタに、コレルはうなずいた。
「どうも。お前はそういう予定ないのか?」
「今のところは。ああ、でも先輩が新婚ほやほやだよ」
「クロスアローが結婚したのか? 意外だな…」
「そうか?」
「何となく。…美人だろ」
「どうしてわかる?」
「学生の頃、行きつけのバーで何度かクロスアローが女と一緒のところを見かけたことがあるんだ。相手は毎回違うんだけど、どの女も美人だった」
「……バーっていうと……」
「“アストロロジー”って店だよ。アパートに近くてさ」
その女は毎回変装していただろうが同一人物で、しかもレドと一緒にいたのは純然たるビジネスの話をするためだった、ということを知っているクレスタだったが、そこは賢く黙っていた。
他愛のない話やかつての同級生の近況などを話していると、あっという間に到着した。
「じゃあな。また連絡する。みんなも会いたがるだろうし、飲みに行こうぜ」
「ああ」
お互いの連絡先を交換し、歩き去る友人の後姿を、クレスタはぼんやり見送った。
卒業を控えたあのときまで、自分もああなるのだと漠然と思い描いていた、きっちりとスーツを着込み書類鞄を小脇に抱えたビジネスマン。
人生どうなるかわかったもんじゃない。
クレスタはふっと息を吐いて笑った。
鞄を提げてゆっくりとした足取りでホームを後にする。
「クレスタ!」
聞きなれた女性の声が迎えてくれた。最近Uターン就職をした二番目の姉だ。
その半歩後ろに、ショートカットの女性がにこにこして立っている。クレスタの記憶にない人物だ。
「姉さん。わざわざ迎えに来てくれたの?」
「買い物のついでよ。紹介するわ、弟のクレスタ。こちらは私の友人、ステフィ」
クレスタは物静かな印象の女性と礼儀正しく挨拶をした。
「休暇をうちでどうぞって誘ったの。ちょうどよかったわ、クレスタが帰ってきて」
「つき合わせちゃ迷惑よ」
「いいのいいの、どうせ暇なんだから。あ、ちょっと待ってて」
そこでなにか思い出したらしく、通りかかった売店に駆け込んで行った。
相変わらずだな、とクレスタは苦笑した。
「すいません、騒々しくて」
「いいえ。あの、ほんとに気にしないで下さいね。一人でも大丈夫ですから」
「ええ。でも良かったら、気が向いたときに一緒に出掛けてもらえませんか。こっちにはもう友達もあんまりいなくて」
「じゃあ、お暇なときに」
ためらいがちだった笑顔が本物に変わったのを見て、クレスタはなんだかうれしくなった。
人生どこでどうなるかわからない。
思いがけず楽しい休暇になる、予感がした。
今回は『クロスアロー』本編直後、クレスタとベルデオには出番がなかった番外編のあたり。そのうちベルデオ編も書くかも。
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勤め先であり住み家でもある宇宙船“クロスアロー”が定期点検を兼ねた改修に入ったため、二ヶ月の休暇を得たクレスタは久しぶりに実家に帰省することにした。
田舎というほどでもないが、都会とも言い切れない。中途半端な規模の生まれ故郷へはもよりのコロニーから定期便を乗り継いで四日。
午後には目的地に到着、というその朝、クレスタは自由席の一席に腰を下ろした。
しだいに混雑してくる車中を尻目に、前もって買い込んだ雑誌に目を通す。
「ここ空いてますか」
「ええ、どうぞ」
と答えて顔を上げると
「あ」
「え?」
同時に声をあげた。
「クレスタ…か?」
「コレルオネ?」
同じ大学に進学した、唯一の同級生だった。
「久しぶりだなあ。里帰りか?」
「そう。コレルはこっちに就職したんだったっけ」
荷物を網棚に押し込み、すっかり出張中のサラリーマンという風情の友人は、一気に時間を昔に戻して気安い口調で話しかける。
「まあな。景気はどうだ? 今は貨物船乗りか。しかもクロスアローだろ?」
おや、とクレスタは思った。
「先輩を知ってたんだ?」
「直接知り合いってわけじゃないけど、有名人だったからな。仕事にも厳しいだろ」
「そうでもない」
自分でも意外な事実だが。
と、携帯電話が鳴った。コレルだ。
「…ああ、もう帰る。……うん、うん……大事にしろよ。じゃあな」
短い通話を終えると、礼儀正しく視線を雑誌に落としていたクレスタに問われるより先に、照れくさそうに言った。
「あ、俺、結婚したんだ。来月には親父さ」
「……へえ。それはおめでとう」
にっこり笑って言ったクレスタに、コレルはうなずいた。
「どうも。お前はそういう予定ないのか?」
「今のところは。ああ、でも先輩が新婚ほやほやだよ」
「クロスアローが結婚したのか? 意外だな…」
「そうか?」
「何となく。…美人だろ」
「どうしてわかる?」
「学生の頃、行きつけのバーで何度かクロスアローが女と一緒のところを見かけたことがあるんだ。相手は毎回違うんだけど、どの女も美人だった」
「……バーっていうと……」
「“アストロロジー”って店だよ。アパートに近くてさ」
その女は毎回変装していただろうが同一人物で、しかもレドと一緒にいたのは純然たるビジネスの話をするためだった、ということを知っているクレスタだったが、そこは賢く黙っていた。
他愛のない話やかつての同級生の近況などを話していると、あっという間に到着した。
「じゃあな。また連絡する。みんなも会いたがるだろうし、飲みに行こうぜ」
「ああ」
お互いの連絡先を交換し、歩き去る友人の後姿を、クレスタはぼんやり見送った。
卒業を控えたあのときまで、自分もああなるのだと漠然と思い描いていた、きっちりとスーツを着込み書類鞄を小脇に抱えたビジネスマン。
人生どうなるかわかったもんじゃない。
クレスタはふっと息を吐いて笑った。
鞄を提げてゆっくりとした足取りでホームを後にする。
「クレスタ!」
聞きなれた女性の声が迎えてくれた。最近Uターン就職をした二番目の姉だ。
その半歩後ろに、ショートカットの女性がにこにこして立っている。クレスタの記憶にない人物だ。
「姉さん。わざわざ迎えに来てくれたの?」
「買い物のついでよ。紹介するわ、弟のクレスタ。こちらは私の友人、ステフィ」
クレスタは物静かな印象の女性と礼儀正しく挨拶をした。
「休暇をうちでどうぞって誘ったの。ちょうどよかったわ、クレスタが帰ってきて」
「つき合わせちゃ迷惑よ」
「いいのいいの、どうせ暇なんだから。あ、ちょっと待ってて」
そこでなにか思い出したらしく、通りかかった売店に駆け込んで行った。
相変わらずだな、とクレスタは苦笑した。
「すいません、騒々しくて」
「いいえ。あの、ほんとに気にしないで下さいね。一人でも大丈夫ですから」
「ええ。でも良かったら、気が向いたときに一緒に出掛けてもらえませんか。こっちにはもう友達もあんまりいなくて」
「じゃあ、お暇なときに」
ためらいがちだった笑顔が本物に変わったのを見て、クレスタはなんだかうれしくなった。
人生どこでどうなるかわからない。
思いがけず楽しい休暇になる、予感がした。
更新停止中
今更いうまでもないことですが、更新が滞っております。
復活予定は8月下旬を予定しておりますので、お客様におかれましては誠に勝手ながら、またのご来店を願う次第です。
しりきれとんぼの番外編だけでもどうにかしようと思っていたのですが、申し訳ありません。
TOPにも更新停止の表示を出そうと思っていますが、そんな余裕もなく。
それではしばらくお暇いたします。
復活予定は8月下旬を予定しておりますので、お客様におかれましては誠に勝手ながら、またのご来店を願う次第です。
しりきれとんぼの番外編だけでもどうにかしようと思っていたのですが、申し訳ありません。
TOPにも更新停止の表示を出そうと思っていますが、そんな余裕もなく。
それではしばらくお暇いたします。
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